日立建機日本様

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神奈川県を中心に17拠点の事業所を持ち、「タツミ訪問看護」という名称で、自宅での介護や医療ケアを必要とする方々に訪問看護サービスを提供している株式会社メディプラス。
松本竜馬さんは2023年1月に「事業承継」という形でタツミ訪問看護の新社長に就任。新体制で会社をリスタートするにあたって、まず着手しなければならないと考えていたのが「タツミ訪問看護」というサービスの社会的イメージ向上だったといいます。
いわゆるブランディングをサポートしてくれるパートナー企業を探していた松本さんからの相談を受けたLampTokyoは、ブランディング戦略の立案をはじめ、動画コンテンツやラジオ番組の企画など、さまざまな施策のサポートを行いました。
タツミ訪問看護から松本社長、本部長の西村さん、現場で働く看護師の代表として統括部長の本間さんをお招きし、LampTokyo代表の的場、プランナーの新家を交えて、今回のブランディング施策について振り返っていただきました。

短期的視点ではない、長期的視点からのインナーブランディングを提案

──まず、松本さんがLampTokyoに相談を持ちかけた経緯について教えてください。

松本:事業承継という形で私が新たにタツミ訪問看護の社長に就任するにあたり、最初に考えていたのが、タツミ訪問看護を「神奈川県内における訪問看護の代名詞」にしたいということでした。
タツミ訪問看護は神奈川県を中心に展開しているサービスなのですが、それまでは各事業所単位でブランドイメージにバラつきがあり、利用者からは「タツミ訪問看護」という一枚看板の下でのブランドイメージをあまり持たれていなかったんです。
加えてこの業界は、少子高齢化や医療従事者の不足といった社会的課題もあり、サービスを担う看護師などの働き手が慢性的な不足状態にある。採用面の強化を考える上でも、タツミ訪問看護の統一的なブランドイメージを確立することが急務だと考えていました。
そこで、タツミ訪問看護の目指すべき方向性やあるべき姿を新たに打ち出すためのブランディング・マーケティング強化をサポートしてくれるパートナーを探していたのですが、事業継承するために活動していた時代の知り合いが的場さんの前職の同僚だったということで、LampTokyoを紹介してくれたんです。

──松本さんからのご相談を受けて、的場さんはまずどんなことを考えましたか?

的場:松本さんはもともと金融畑の人なので数字重視の経営者タイプのかなと勝手に想像していたのですが(笑)、いろいろとお話を伺う中で「日本が抱える少子高齢化という大きな課題のなかで、訪問看護業界をより良くすることで社会に貢献したい」という長期的ビジョンと熱い想いを持って、この業界に飛び込まれたんだな、ということが衝撃でした。しかし、お話を伺う中で個人的にちょっと違和感を覚える部分もあったんです。
というのも、松本さんが大きなビジョンとして持っている「訪問看護そのもののバリューを上げていきたい」という想いは、いわば長期的ゴールです。一方で看護師などの採用を強化したいという直近の課題もあり、これはどちらかというと短期的ゴール。人材紹介サービスにある程度の資金を投下すれば、解決できてしまう側面もある。松本さんはこの2つの長期的ゴールと短期的ゴールの間で、揺れ動いているようにも見えました。
後者の短期的ゴールである採用強化施策は、松本さんが社長に就任されてからすでに精力的に動かれているようにも見えましたし、私たちLampTokyoがサポートすべきなのは、前者の「訪問看護そのもののバリューを上げていきたい」という長期的ゴールを達成するためのブランディングなのではないかと考えました。

──そこから具体的にどのようなご提案を行なったのでしょうか?

的場:タツミ訪問看護のブランディングを行う上で、大きくアウターターゲットとインナーターゲットの2つがあると思いました。アウターターゲットは主に世の中の看護師さんや病院関係者、サービスの利用者さん、タツミ訪問看護で働く人材を紹介してくれるリクルーティング業者のような人たち。インナーターゲットはすでにタツミ訪問看護で働いている従業員の方々です。
私たちが最初に提案したのは、まずはインナーターゲットに重きを置いて、現在働いている人たちに新しいタツミ訪問看護を理解し、もっと好きになってもらおうというご提案です。それが実現できれば、従業員の方々自らが広告塔になって、周囲で働く看護師さんや病院関係者、利用者さんなどにも「タツミ訪問看護って良い会社らしいよ」といったポジティブなブランドイメージがじわじわと広がっていくのではないかと考えました。
時間はかかるかもしれませんが、結果的にそれが長期的なゴールを達成するためのブランディングとなり、ひいては採用強化などにもつながっていくのではないかと思ったんです。

──そのような提案を受けて、松本さんとしてはどのようなことを感じましたか?

松本:最初は正直びっくりしました(笑)。というのも「訪問看護の代名詞になりたい」という大きな夢を語ったこともあり、世の中に向けて大きな花火を打ち上げるような派手な施策が出てくるのかな、と思っていましたから。
「でも、大きな花火を打ち上げるためにはしっかりした下準備が必要」と、足元のインナーブランディングから固めていくことの重要性を説かれて、驚いた一方で「なるほど、確かにそうなのかも…」と思う部分もあった。
不思議とそれに対する反発や「いや、違うんだ!」みたいな感情はありませんでしたね。それは多分、的場さんの第一印象として「この人は真実を語ってくれる人だな」という期待感があったから。自分を大きく見せるような営業トークは絶対にしないし、こちらが間違っている方向に進んでいたら「それは間違っています」とキッパリ言ってくれそうな雰囲気があった。
LampTokyoのスタッフの皆さんともお会いする中で、この人たちは自分たちのことを100%本気で考えてくれるプロフェッショナル集団だなと感じていたので「じゃあ、やってみましょう」と前向きに信頼してみることにしました。

動画の制作を通じて、現場で働く従業員との距離が縮まった

──インナーブランディング強化のための具体的な制作物として、まずいくつかの動画コンテンツを作られたと聞いています。どのような動画を作られたのか教えていただけますか?

的場:まずはブランドを強化するための大きな戦略立て、その戦略のもとに3つの企画を立てました。1つ目の企画は、タツミ訪問看護の経営のキーマンたちと松本社長の対談動画。2つ目が、日々現場で活躍している看護師さん達+松本社長の座談会動画。そして3つ目が、現場の看護師さんの1日に密着したドキュメンタリー動画です。

──1つ目の対談動画の狙いや目的はどのようなものだったのでしょうか?

新家:急に外部から社長がやってきて「これからうちの会社、どうなるんだろう?」と不安や戸惑いを感じている従業員も多いであろう中、「タツミ訪問看護は今こういう状況で、こういう想いの下に事業承継が行われました」という会社の現状と新社長の松本さんの人となりを、まずはインナーに向けてしっかり発信する必要があると考えたのが、対談動画の狙いと目的です。

 

前社長の瀬崎さんと新社長の松本さんの対談の他、対談動画は他にも2本作っています。2本目がタツミ訪問看護の株主であるJapan Search Fund Platformの嶋津紀子さんと松本さんの対談動画。嶋津さんは松本さんが事業承継前から支援されていた立場の方ですが、この対談を通じて、経営者としての松本さんの考えや人となりを伝える狙いがありました。

 

3本目は、現場で働く看護師さんの代表として、このインタビュー記事にも登場してくれている本間さんに出てもらい、松本さんと対談してもらいました。より現場に近い立場の本間さんと松本さんが話すことで、現場スタッフの皆さんによりわかりやすい形で、松本さんの考えを伝えようという狙いがありました。

──その次に撮影した2つ目の座談会動画にはどのような目的や狙いがありましたか? 

新家:現場で日々活躍している看護師の方々を招いて、松本さんと本音でざっくばらんに語り合ってもらう座談会を開催し、その様子を動画にしたのですが、この動画はタツミ訪問看護の会社の雰囲気を外部に向けて伝えるアウターブランディング要素の強いコンテンツでした。一方、制作プロセスに従業員を巻き込むという意味で、インナー要素も多少意識しています。
加えて、松本さんが社長に就任するにあたって、新たに会社のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を策定したのですが「それに対して社員はどのように考え、これからどのように動いていこうと思っているのか?」などを話し合ってもらうことで、MVVを自分たちの中に深く落とし込んでもらおうという狙いもありました。

──これらの対談動画や座談会動画への反響にはどのようなものがありましたか?

松本:インナーからは「新社長のやりたいことがわかった」「この会社をいい方向に変えてくれそう」「純粋に社長の人柄が理解できたのはよかった」といったポジティブな声が寄せられました。

 

やはり私が社長に就任してから、現場の方々とはまだちょっと距離があるな、というのは正直感じていたんです。私の顔や名前を知らない従業員も多かったと思うのですが、これらの動画をきっかけにグッと距離が縮まって、同じ方向を向いているパートナーだと認識してくれるようになった気がしています。

 

また、最初に制作した対談動画はインナーターゲットを意識して作られたものですが、アウターにもすごく響いた部分があって。特に、人材紹介エージェントからの評判がとてもよかったですね。弊社を担当してくれているエージェントにこの対談動画を共有したら、向こうの社内でも展開してくれたみたいで、その日のうちに再生数が顕著に伸びました。

 

事業承継やM&Aに対して、どこかお金目的で冷たいイメージを持っている人も多いかと思うのですが、動画を見て「こういうあたたかい形の事業承継もあるんだ」と感じてもらえたみたいです。動画を見てくれた人材紹介エージェントからの弊社への紹介数は、全国でもトップクラスらしく、採用面にも非常に貢献してくれていますね。

──3つ目の現場の看護師さんに密着したドキュメンタリー動画についても教えてください。

新家:実際にタツミ訪問看護で働いている看護師さんが、利用者さんのところに足を運んで仕事に取り組まれている1日の様子に密着したドキュメンタリーテイストの映像です。

 

これはアウターターゲットを対象にした動画で、さまざまな人に広く見てもらえるようなフォーマットとして、ドキュメンタリーという形式を選びました。看護師さんの仕事ぶりを淡々と撮るだけではなく、そこに利用者さんや病院関係者さんへのインタビューなども挟んだことで、よりドラマチックな映像に仕上がったと思います。

 

特に動画に登場してくれた利用者の皆さんが、本当にいいコメントをしてくれて。タツミ訪問看護のケアに対する心からの感謝が伝わってくるようなコメントばかりで「訪問看護って本当にすごい仕事なんだな」と、我々制作チームも実感した動画でした。

 

松本:この動画が公開されてから私はもう5回くらい見ているのですが、5回とも泣きました。こちらはアウターを意識した動画でしたが、現場で働く看護師さんをはじめとしたインナーにも「自分たちの仕事の価値を感じられた」と、めちゃくちゃ刺さっています。

 

的場:訪問看護師の社会的承認や地位向上させたいというのは、松本さんもずっとおっしゃっていたので、それに少しでも貢献できるような動画がつくれたのなら、我々としても非常にうれしいですね。

より多くの人々にタツミ訪問看護を知ってもらうために、ラジオ番組を制作

──ラジオCMとラジオ番組も制作されたと聞いていますが、具体的にどのようなコンテンツを展開されたのでしょうか?

新家:そもそも、訪問看護というサービスの存在を知らない人も、世の中にはまだ多いのかもしれないと思いまして。そういった人たちに「訪問看護とはどのようなサービスか?」ということを啓蒙しながら、同時にタツミ訪問看護というサービスの存在を知ってもらうためには、Webコンテンツだけでなくもっと広く訴求できる媒体が必要だと考え、ラジオに着目しました。

 

特にタツミ訪問看護がサービスを展開している神奈川県は、FMヨコハマの聴取率が非常に高く、タツミ訪問看護の地域密着性を感じてもらう上でも、ラジオコンテンツとの親和性は非常に高いと考えたんです。

 

そこで、FMヨコハマにてタツミ訪問看護を紹介するラジオCMを流すと同時に、毎週月曜のAM11時から「Lovely Day」という番組内の1コーナーを10分間いただいて、タツミ訪問看護の紹介番組を流してもらったんです。

 

露出期間としては3ヶ月間で、1ヶ月目は松本社長に毎週出演してもらい「訪問看護とは何か?」という基礎知識から話をしてもらいました。2ヶ月目は実際に現場で働いている従業員の方々にご出演いただき、3ヶ月目はこれまでの総まとめ的な内容で締めくくりました。

──ラジオ番組をやってみての反響はいかがでしたか?

本間:ラジオの反響は本当に大きかったですね。ケアマネージャーさんから直接声をかけていただいたり、利用者さんのご家族から「ラジオ聞きました」とお電話をもらったり、お手紙をいただいたりもしましたね。

 

西村:初めてご挨拶に伺った営業先で「ラジオ聞いてますよ」なんて声をかけていただくこともありました。タツミ訪問看護の存在を今まで知らなかったであろう人たちにも「タツミさん? あのラジオをやられている?」みたいに声をかけてもらえるようになって、あらためてFMヨコハマとタツミ訪問看護の親和性を実感しています。

 

また、従業員の方々にも番組に出演してもらったことで「自分たちがタツミを代表しているんだ」という参加意識を持ってもらえた部分もあり、そういう意味では、インナーへのポジティブな影響も大きな施策だったなと感じています。

──本間さんは現場で働く看護師代表として、ラジオだけでなく松本さんとの対談や座談会にも出演されたと聞いています。緊張などはしませんでしたか?

本間:こういったクリエイティブな制作のお仕事に携わる機会なんて今まで全くなかったので「何をするんだろう? どうやって進めていくんだろう?」と最初はわからないことだらけでした。でも、緊張することは不思議となかったですね。それはやっぱり、LampTokyoの皆さんがうまく雰囲気づくりをしてくれたからだと思うんです。私たちが喋りやすいように自然に誘導してくれたり、緊張しないような環境を整えてくれたから。本当にありがたかったですし、皆さんすごい仕事をされているんだなって思いました。

 

西村:LampTokyoは訪問看護という仕事の中身にまでしっかりと踏み込み、私たちの事業を根底から理解した上で、企画と制作物をつくってくれた。その姿勢が一番うれしかったですね。現場でうちのスタッフが緊張せずに話せたり、伝えるべき内容をしっかり伝えられたりできたのも、LampTokyoがそのような姿勢で仕事に臨んでくれたからだと思います。

インナーブランディングの重要性を世の中にもっと広めてもらいたい

──今回の施策を振り返って、率直にタツミ訪問看護の皆さんはどんなことを感じていますか?

松本:インナーブランディングの重要性をこれ以上ないほど理解できましたね。この先、何回生まれ変わっても、インナーブランディングは絶対やるだろうなと感じているくらい(笑)。先日、大学に呼ばれて講義をする機会があったのですが、そこでも「インナーブランディングって超大事だよ!」という話をしてきました。

 

西村:動画やラジオに中の人たちが出演することに関しては、正直リスクもあったと思うんです。「看護師がグイグイ表に出て行くのはどうなんだ?」とか、我々の業界は小規模な事業者も多いので「マーケティング予算を持ってるからできるんだろ」みたいに思われたりとか。そういったネガティブな声が今回一切聞こえてこなかったのは、制作物を通じて、私たちの伝えたい想いがしっかりと伝わったことの表れなんじゃないかと思います。

 

新家:見た人の気持ちが動くようなコンテンツを作るためには、従業員の皆さんをはじめ、利用者さんや病院関係者さん、出演してくれたすべての人たちの想いが乗っからないとうまくいきません。そうしたコンテンツが作れたのは、やっぱり皆さんのタツミ訪問看護への想いがあったからこそだと思います。

 

本間:内部からも今回の施策に対するネガティブな意見は全く出てきませんでした。「社長が代わったからこそ、新しいことをどんどんやっていくチャンスですね!」とか「うちの会社もこういうことができるんですね」とか、若い世代だけでなく、ベテランスタッフからもポジティブな声が出てきたのも、私としてはすごくうれしかったです。

─最後に、的場さんと松本さん、それぞれの会社の代表としての立場から、今後のチャレンジや意気込みについてお聞かせください。

的場:松本さんが社長に就任されてから、タツミ訪問看護は新たに会社を創業したかのような、非常に重要な局面を迎えられたかと思います。そうしたタイミングにおいては、本業の事業やサービスを整えることに目が行きがちで、ブランディングに力を入れていこうという発想はあまり出てこないものです。

 

そういった意味で、最初に相談を受けた時、松本さんがブランディングというものを非常に大切にされていることが弊社としても理解できたと同時に、新たなリスタートを切る会社のブランディングにゼロから携わる得難い経験をさせていただきました。

 

加えてLampTokyoとしても、ブランディングやマーケティングを通じて日本が抱えている社会課題を解決するような貢献ができればと日頃から考えているので、松本さんが考える事業を通した社会課題の解決にこれからも微力ながらお力添えできたら、と考えています。

 

松本:今後とも何卒よろしくお願いします。我々のような中小企業で、ブランディングに悩んでいる会社はたくさんあると思うんです。SNS全盛の今、いかに目立つかというようなことばかりが取り沙汰される傾向がありますが、「中の人たちの想いをひとつにする、地に足のついたブランディングも大事だよね」とLampTokyoさんが世の中に広めてくれるような事例を、私もLampTokyoの一ファンとして、これからもっと見ていきたいなと思います。

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